体重は、とうとう、2.5キロしか増えなかった。
このことを経産婦に話すと、たいそう気の毒がってくれる。
子供が生まれることを、他人であっても、たいそう喜んでくれて、申請時に会える、ということに、目を輝かせて、新生児に合いたい、と言ってくれる。
わたしには、母がいないので、そうした人のやさしさが染み渡るようである。
ここの地は、子供を地域で育てるという気風がある。また、共稼ぎも多い。それでも、三人兄弟はざらである。
臨月までタバコを吸いとおしたとか、体重を怒られまくったけど無視した、という武勇伝は、ネットには乗っていない。しかし、それがどんなにわたしを助けてくれていたことか。
それでも、子供は健康に育っているのだ。
その前例よりも、助けられる言葉はない。
夜泣きは夫の担当だった、家事なんてしなかった、生まれて二か月から預けていた、そういう話が心を温める。
今は、あせもとアトピーのコンボで、かゆくて暑くてつらい。今、パートナーにスイカを買ってきてもらうところだ。
皮膚は全身でつながっているので、内臓にも湿疹があるのであろう。
漢方薬局は、あれを食べるなこれを食べるなとうるさい。わたしは、彼らを信じない。
中国に留学して、東洋医学を学んでいた先生に通っていた時は、なんでも食べるように言われていた。
体を冷やしたり、炎症を強めたりする食べ物はあるが、普通に食べる分には問題がないし、それよりも、食べ物が偏って、栄養バランスが悪くなるほうが問題である。
そういっていた。薬膳の本も出版している方だったが。
睡眠時間が、減ってしまって、ここ一週間、あまり眠れなかった。昼間寝てしまうのが悪いのかと思って自粛していたら、夜も二時間で起きるので、一日の睡眠時間がトータルでも四時間という恐ろしい結果となってしまった。
メンタルのせいかと思って、精神科の受付で相談したら、「妊婦は、臨月になると、おなかの重みで、物理的に腰痛で起きる、子供も動くから、気づかないでも目が覚めるんだ」ということを言ってもらった。
経産婦よりも心強いアドバイザーはいないと確信した。
その人は、夏臨月だったそうで、保冷剤を足に巻いて寝たらしい。同じである。
足の裏や掌が熱くなるのは、みんなそうだという。
夏臨月は特につらいそうだ。
マタニティヨガのおかけか、便秘にも腰痛にも、それほど悩まされていないが、ぱっつんぱっつんになった腹を見ると空恐ろしい。
ちんぽの幅しか空いていない穴から、三キロの物体をどうやってひりだすというのか。
広がるとは聞いているが、広がっていないものを広げたら、そりゃ痛い。
そのうえ、産んだら、子宮も産道も、数時間で収縮するという。
収縮だって痛いに決まっている。
まったく、男にもときどき代わってほしい。
唯一の救いは胎動である。胎動があると、ほんわかとした、幸せな気持ちになる。
こうして、他人と真に一体になるのは一生で何度あるだろうか。
一端、外に出てしまえば、それはもう、独り立ちの第一歩である。
おなかで暴れて、痛みで眠れなかった日々もすでに懐かしい。
大きくなったので、胎児もお中で泳がない。身じろぎをするのが精いっぱいで、骨盤の間に、頭をうずめている様子である。
人間を一人増やすために、こんな手間のかかるばからしい機関が必要なのは、誰の思惑か。
とにかく、皮膚のトラブルが、目下の悩みである。